腕の方向性

アレクサンダーテクニークで腕・足の使い方というのは、根幹ではなく、部分的なことです。

ですが、部分で間違った使い方をしていると、自分の使い方のコントロールセンターである頭・胴体という根幹にも悪い使い方が波及します。

アレクサンダーテクニークは使い方に対して、良い・悪いと真っ二つに白黒つけるものではないですが、どこかが上手く機能していなければ、他の部分も同じ…ということです。

腕と胴体の関係性に気づいて見ましょう。

もし、あなたの習慣が、胸を張るために肩を後方に寄せるようなものであるならば、貴方の腕はアレクサンダーテクニークの世界で「腕を短く使っている」といわれるような状況にあります。

学校で学ぶ「きょうつけ」は、典型的なこの例です。

肩甲骨と肩甲骨の間は、習慣的に狭められます。
肩は後方に移動し、肘も本来ある場所から、後ろ向きへと外転しながら、脇の緊張感を高めます。
腕全体は、引き上げられ、アレクサンダーテクニークの世界では「短くなる」といわれる状態で使われます。

そんな状態の時、胴体では何が起こっているでしょう。
首は緊張感をまし、胴体は少し反った状態になり、骨盤は前に押し出され足の緊張感が増します。

いわゆる、ピンと背筋をのばしたきょうつけは、こんな感じですよね。
日常的な動作の中で、程度の差はありつつも、この間違った(不要な)緊張感を持ち続けながら、腕を使っている方は、とても多いです。

反対に、猫背のように、背筋を丸く使っている場合は、前述と反対の動きが現れます。

胸を狭めながら、肩は前方に行き、腕がぶらりと緊張感が足りない状態でぶら下がることが多いです。
首の後ろが詰まり、胴体を支える緊張感が足りないために、腰や肩に負担がかかったりしています。

アレクサンダーテクニークは、そのどちらでもなく、もっと中立的で機能的な状態に導いてくれます。

肩は、たんに前から見て横に広がるということではなく、胴体が前も後も側面も広がることで、結果、横に広がっていくことができます。

肩の構造は、鎖骨と肩甲骨の端がくっついていて、そのくっついた部分が腕が下がるための屋根(肩)になっています。
上からみると、鎖骨と肩甲骨が作るVサインみたいなもので、Vの先っぽが上から見た肩関節です。

この肩の構造は、胴体の上に乗っかっていますので、胴体の状態と連動して動きます。
胴体がしょぼんと猫背になれば、肩は前に
胴体が胸を張りそっくり返った状態を作れば、肩は後ろに
といったように。

なので、「肩の場所はどこか?」と考えず、胴体の広がった結果、肩の広がりが実現できると考えるとよいです。

ということで、腕の使い方(方向性)をケアするためには、まず頭・胴体の部分からケアします。(アレクサンダーテクニークでは、頭・胴体の方向付けが第一です)

・首はラクになり、頭は上方に、胴体が長く広く使われながら、肩は横に広がります。
(「首がラクになる」ということは、適度な緊張・張りを持ちながらも、頭と胴体の間で動きの連動性を持ちながら自由に動けることを指します。)

その人の習慣によっては、胴体が広がるために、背中や胸が今までより狭くなる必要があります。
それは、いままでその広さを作り出すために、反対側を萎縮させているはずだからです。
萎縮していた部分が開放されると、いままで過剰に広げていた部分は、適度な広さに戻るために狭くなる方向に動いていきます。

・そして、その横に広がった肩から、肘までが長く伸びていきます。

これは、伸ばそうとするのではなく「不要な力が抜けて、こちらに開放されていく」という意味です。

立体感を持った腕ということを大事に方向付けてください。
腕の背面・前面・側面…すべてを意識に含んで、肘の関節に向かって長く流れていくように開放されていきます。

・そして、肘から手首、手首から手のひらの中へ、手のひらの中から指先へ…長くなっていくことを許します。

腕だけに集中してしまうと、使い方の大元締めである頭・胴体の方向付けを忘れてしまいます。

自分全体に気づきつつ、首がラクに・頭は上に・胴体は長く広く広がり、肩はその結果横へ広がり、腕はそこから肘・手首・指先に向かって伸びていくイメージです。

イメージと書きましたが、意図でもあり、実際の動きでもあります。

実際のレッスンで、これを学ぶことが難しい人は、こんなことを観察してみてください。

あなたはものに触るときに、どういった触れ方をしていますか?
必要以上にギュッと握っているのか・なんとなく、ボーっとした手で握っているのか。

過剰な緊張、過剰なリラックス・・・そういったものに気づいたら、自分の使い方(触れ方のテンション)を変えることができると思います。
そして触れ方を変えることで、身体の体幹部に影響があることにも気づくことがあるかもしれません。
(一人で行う実験…ですので、これが正しいやり方ということではなく、お試しという気楽な感じでやってください。)

アレクサンダーテクニークの学びは、実際には教師の助けを借りて体験する必要があります。
それができない人は、上記のように、日常で自分をどのように使っているかを観察して、意図的に使い方を変えることを試してみることもできます。
実際のレッスンの代わりにはなりませんが、もしかしたら、何かにハッと気づき、自分の使い方をもっとラクにするきっかけができるかも知れません。

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