やりたくないことを、やる。 観察とインヒビション
さて、前回の続きです。
アレクサンダーテクニークを使って「やりたくないことをやらなくては」に対応するということ。
やらなくてすむなら、それが一番よいですけど、そうもいかないこと、たくさんあると思います。
小さなことから、大きなことまで。
そんなとき、一人で、アレクサンダーテクニークのエッセンスを使って、どのように自分をサポートすることができるか。
観察
さて、まず、そんな時何が起きているのか、1)観察をしてみます。
・焦ってる。
・身体が重い。
・逃げたしたい。
・混乱している。
・身体が緊張している。
などなど、何でもよいです。
「やらなくてはいけないこと」に対してどのように反応しているかに気づくことができるでしょうか。
「やらなきゃ」と「やりたくない」の綱引き状態で、感情的であろうが身体的なことであろうが、なにかが起きています。悪いことではありません。普通のことです。ただの状況です。
そんな、身動きが取れないような状況の中で「エイや!!!」と、なんとかがんばって綱引きの勝敗をどちらかに向かわせたりします。(もしくは、放棄して逃げ出してしまったり)
私はそういう反応も「いいじゃない、そういうこともあるよね。」と思いますけど、それではこの記事の意味がないので・・・。
アレクサンダーテクニークを学んでいる生徒さんは、「違うやり方を見つけたい」方たちですし、私ももっとスッキリとした状態で物事にのぞみたいときもあります。できれば、いつもそうでありたいです。
インヒビション(抑制)
初めのステップの観察をして、「このやり方・この反応から抜け出したい」と思ったら、一度その願いも手放して自分の反応を静めてください。
これが、第2ステップのインヒビション(抑制)です。
ちょっと、落ち着いてほしいのです。場合によっては、作業をやめて、眼を閉じてもいいです。
時が止まったように、立ち尽くして、ストップモーションに入っても良いです。
しばしワサワサとざわめいている自分の思考と、綱引き状態にある自分の身体を休めてあげてほしいんです。
(一般的にのアレクサンダーレッスンでは、眼を閉じることはしないのですが、アレクサンダーテクニークに慣れていなくて、眼を閉じないとそれができない場合は、そうしてみてもよいと思います。ただし、眼を閉じないとインヒビションできないということにならないようにご注意を。)
どれくらいの時間が必要かは、そのときによって違うかも知れません。
私の場合は、30秒くらい?
とにかく、混乱の状況、エネルギー不足の状況に導いている思考のおしゃべりをやめる必要があります。
「時間がない」「できるかどうか不安」「大変だ」「怖い」
たいていの場合、こういう思考は「習慣」で、同じような言葉をグルグル繰り返しているだけだったり、
「時間がない」→「なんでいつもこうなの?」→「だいたいあの人がいつも私の仕事を増やすのよ!」→「ホントにあの人は~~」などなど、ドンドン無意識に習慣的思考を積み重ねていって、自分がオーバーヒートしそうな状況になります。
なので、まずは、反応を静めていく。
自分の固定概念や、予想や、「いつも」の状況と「今」を結びつけるのをやめていく。
完璧に、というわけではありません。
完璧にできたらすばらしいけれど、そうでなくても、初めの状況よりはだいぶましだと思います。
ともかく、この、抑制・ストップ・習慣的反応から離れる・落ち着く、そんな状況がとっても大事だと思います。
そうすると、あら、不思議。
なぜか、スルスルと、今まで「やだな」と思っていた行為に入れます。
もしくは、全然違う発想が浮かんできて、良い解決策が見つかったりします。
全然特別なことではないですね。「落ち着きなさい」というメッセージを自分に与えればよいのかも知れません。
落ち着くといっても、興奮が冷める、という意味だけではなくて、思考のおしゃべり・身体の反応を沈めてあげるということです。
うまくいかないのは、なんで
以上のことは、私の自身と、生徒さんとのレッスンで体験から述べていることです。
「いやだけど、やらなきゃ・・・ああ、もう!!」なんて反応しているうちは、なんだかムリがある。
結果が良くとも、自分が快適でなかったり。
アレクサンダーテクニークを使うという意味ですと、もっと先があって、頭と胴体の方向性についてディレクションを与えることも必要ですが、そこまで一人ではなかなか出来ない方には、インヒビションまででも、今までと違った反応ができるのではないでしょうか。
アレクサンダーテクニークに慣れている方は、インヒビションだけで、自然とディレクションを発揮し身体の調和を取り戻すことも出来ると思います。
アレクサンダーテクニークを使おうとしているのに、うまくいかないという場合、原因はいろいろあるのですが、そのひとつにスピードを求めてしまうことがあります。
特に、「急いでいる」場合など、いますぐ変わりたい場合などは、パッと変化が起きてほしいので、アレクサンダーテクニークを使おうとしているにも関わらず、手順をちゃんと踏めていないということがあります。
実際のレッスンでは、先生がそばにいるので、変化がスルリと簡単に起きますね。
なので、実際の生活に戻ったときも「頭・身体の方向性を思いさえすれば・・・」同じようにスルリと変化が起きるはず・・・・と思ってしまう方もいるかもしれません。
もちろん、スルリと簡単に変化が起きることもあります。
でも、そうでないこともあります。
レッスンの中では、先生が一緒にいてくれるだけで「なんとかしなくちゃ」というがんばりすぎを減らすことができます。
でも、自分ひとりでアレクサンダーテクニークを実践する場合、変化を起こそうと「アレクサンダーテクニークをがんばる」ことをしてしまうケースがあります。
「あれ?うまくいかない!」「もっと、こうだったかな?」「もっとこうしたら良いのかも??」と、どんどんアレクサンダーテクニークを間違った方向性でがんばってしまう。
そんな時は、一度すべてやめる。とまる。
思い出してください。アレクサンダーテクニークは、習慣的な反応を「やめる」ワークです。
そして、建設的で意識的な方法を「選んで行う」ワークです。
建設的で意識的な方向性を選んでいるつもりが、「習慣の中」でそれをやっていては更なる混乱です。
つまり、抑制が足りない。
そんなときは、方向性が明確になっていない場合もあるし、原理を使う手順が粗雑だったりします。
うまくいかないときは、まずは、ちょっと止まること、習慣的な思考に振り回されないことをお勧めします。
ストップしても、思考は消えないかもしれません。
でも、思考をほうっといてあげると、自分の周りをモヤモヤと漂ってはいても影響力を発揮することは少なくなってきます。
やらなきゃいけないことを、やらなくちゃ
というとき、まずは、観察・抑制をお勧めします。
個人的には、観察の手順についても、述べたいことはあるのですが、今回はひとまず、これだけでも充分かなと思います。