アレクサンダーテクニークによって、演技がどう変わったか
- ともこ
- あきさんは、はじめはカチカチになっていたというけれど、アレクサンダーテクニークをやってどうだったの?
- あき
- アレクサンダーテクニークをやってから芝居をちゃんとしたことがなくて。
でも、舞台上で本当に生きてみたいっていう夢がある。
一緒に芝居をやっていた仲間に、役が乗り移ったかのように動く人がいて、なんであんな風になるんだろうと……。
雨のシーンだと雨に濡れているかのように全身で反応したり、
見えないものが見えているかのように反応していたりして、
その時は、その人は「天才」だと思った。
でも、アレクサンダーをやって……
トレーニングコースのパーティーとかで、お芝居を披露することあるじゃない?
あれで、ちょっと実験してみようと思って、アレクサンダーを初めてからはじめて役をちょっとみんなの前でやってみた。
そしたら、何をやればいいか大体明確になっていて、
頭と脊椎のことお願いしたあとは自分の考えたプランを1個1個実験していって……
出来ているかできていないか判断しそうになったら、
それを*インヒビションして、プランに戻るということをただ淡々と実行していて。
あと、*キャシーのワークを受けたときに……
たとえば、目の前に犬がいる演技をしている時に、犬の死を見て泣いた。
泣くなんて、その前の自分からしたら考えられない!
*インヒビション:不要な習慣を抑制すること
*キャシー:アメリカのアレクサンダーテクニーク教師 兼 アクティングティーチャー - ともこ
- おお……。
- あき
- それとは別のキャシーとのレッスンで
「目の前にないんだから、ないものが見えるわけないじゃない」って言われて、すごい気がラクになって。
「無いものを在ると思おうとするから、脳が混乱する」と。 - ともこ
- 混乱するよねー。
- あき
- 「無いものはないし、見えたらおかしいんだから。無いものはないんだから」って言われて。
で、「無いけど、あると決めて、それに、一個一個反応していく」というプランでやってみなさいって言われたの。
無いんだけど……ここに毛があると思って、ちょっと反応してみようとか、
無いんだけど……そこに居ると思ってみてみようとか、
淡々とやっていっていたら、知らないうちに涙が出そうな自分がいて。愛犬の死とそれを体験している自分が、プランの結果としてそこにいるということが……本当に出来た。
セリフがガチガチあるわけじゃないんだけど、
人が見ているまえで、その役として決めたシチュエーションの中に存在し続けていられたっていう経験を初めてした。
たぶん、お芝居をやろうと思ってから、初めて意図してそれが出来た。
実際の稽古では、何回もそうやれていたんだけど、本番になると出来なかった。
でも、その時は観客がいる前でやれたという経験をして。
それは自分のなかで、ものすごく大きなことで。
だから、アレクサンダーを受けて、変わった……変わったというか、確実に結果が出始めた。 - ともこ
- すごーい!!
アレクサンダーテクニークって、身体のワークっていうイメージが強い部分もあるけど
でも「身体」っていう「部分トレーニング」とは違うじゃない?
腹筋を鍛えるとか、身体を柔らかくとか、肺活量の問題とかではなくって、
「意識的に行為を行う」っていう、反応のワーク。プロセスのワーク。
それがアレクサンダーテクニークのいいところだし、役者にとって助けになるね。
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