感情を決めて演じることと、エンドゲイニング

けいこ
仙台にいたときに、結構大きい……50人くらいの市民参加型のミュージカルに出たことがあって、
オーディションもして役をもらえたんだけど、
「なんでここで歌うの?」「なんでここで踊りだすの?」って全然整理がつかなくて。
 
しかもさ、その…それぞれのキャラクターの思いがあるのに、一斉にみんなで歌うじゃない?
だから、歌うという流れについていける役と「いや、全然つながらないけど?」っていう役があった。
 
私はすごい内気な子の役だったの。
内気だけど思っていることはいっぱいあって、伝えたいっていう気持ちもいっぱいあるんだけど、
役のその感情だと、いきなり歌いだす踊りだすことにとても違和感があって、
最後まで掴み切れないから“割り切る”っていう……。
 
そのときは「自分の思いもあるけど、みんなの思いをみんなで歌っている」という解釈でやってたんだけど。
ともこ
解釈が難しそう
けいこ
そうそうそうそう
ともこ
納得しないで言葉や音を発するって気持ちわるいよね。
けいこ
そうそう。
 
今、思うんだけど、演じる前に自分の感情を決めていたな。
こういう感情だからこういうセリフがあって、
その次こういう流れになって、自分としてはこういう思いをもって終わる……って。
 
そう決めたことを辿って演じている感じ。
で、相手役と演じている時に「あれ?」っていう違和感がすると、
「この筋書きはちょっと違うね?」ってやっていたなー。
ともこ
わかる。エンドゲイニングっぽいんだよね。
 
*エンドゲイニング:結果に着目しすぎて、結果にいきつくまでのプロセスが重要視されていないことを表すアレクサンダー用語
けいこ
そそそ。
ともこ
自分の経験を通してもわかるし、
演技だけじゃなくて、音楽をやっている人も、同じようなこと言うよね。
 
自分で決めた「こういう感じ」みたいなものがあって、地に足がつかないまま空想の中でやっているような状態。
……わかる? 
 
相手と全然つながってないんだけど、もう自分のなかに出来上がったプロットがあるから……、
実際に起きていることは放っておいて、自分の妄想についていくだけの……変な感じ。
あき
そればっかりやってたかもね。ダメだしが「相手と本当に会話してない!」とか
けいこ
あった! よくあった! それ!
ともこ
やっぱり「想定通りに実感したい」からじゃないかな?  
 
 
(「やっぱり」……というのは、
アレクサンダーテクニークを学ぶ過程では、過去の良い体験に囚われて
「出来ているか実感したい」「あの時みたいなラクな感覚が欲しい」と、
『感覚に重点を置いてしまいがち』になることが多々あるため。

その結果、実際行うべきアレクサンダーテクニークのプロセスがおざなりになってしまい、楽になれない……
という本末転倒なことがよくある)
  

想定しているのは良いとしても、
コトが起きる前に自分だけ突っ走って感情が先行してしまうと、
今起きていることをおざなりにして、相手を無視せざるをえなくなるよね。

相手との関わりは無視して「想定」はキープしたいままだと。

だから、よく「自分をだせ」とかいうけど、
「自分を出す」っていう意味をはき違えると、それがじゃまになることもあると思う。
 
その、自分よがりな感じから抜け出すのに、アレクサンダーテクニークはすごく役に立つと思うんだけど
……なんでアレクサンダーテクニークを使うとうまくいくんだろう?

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